株式会社ウルフアプリケーション

継続的な保守・運用

PHPの緊急アップデートを支えた、平常時の準備

Dockerでの更新手順と、それまでに用意していたこと

吉田 涼(株式会社ウルフアプリケーション) 

2026年10月、PHPの重大な脆弱性への対応が必要になりました。開発・保守を支援しているサービスでも、10月22日にPHP 8.5.8から8.5.12へ更新しました。僕が行ったDockerでの更新手順と、それまでに進めていた準備をまとめます。

重大な脆弱性や情報漏洩の公表が重なったこの時期は、海外の一部の報道で「Black October(ブラックオクトーバー)」とも呼ばれていました。

PHPをどう更新したか

1. 動いているバージョンと、更新先を確認する

まず、本番のWebアプリとバッチで使っているPHPを確認します。今回の環境は8.5系だったため、同じ系統の修正版へ更新しました。PHP公式が10月21日に公開した修正版は次のとおりです。

2026年10月21日のセキュリティリリース
利用中の系統公式の修正バージョン
PHP 8.28.2.35
PHP 8.38.3.36
PHP 8.48.4.27
PHP 8.58.5.12

OSのパッケージやレンタルサーバーを使っている場合は、提供元の修正状況と更新方法を確認します。古いバージョンに修正を取り込んで提供する場合もあるため、上の番号だけでは判断できません。

2. PHPイメージの指定を変えて、再ビルドする

今回は、PHPとWebサーバーをまとめたDockerイメージを使っていました。以下は、その構成の元になっている公式PHPイメージを、Dockerfileで直接指定する場合の例です。PHPのバージョンを8.5.8から8.5.12へ変更します。

FROM php:8.5.12-apache-bookworm

名前にあるapacheはWebサーバー、bookwormはDebianというOSのバージョン名です。PHP以外の部分は元の構成に合わせ、既存の拡張機能やアプリの構築手順も保ちます。@sha256:…で固定している場合は、ダイジェストも修正版のものに更新します。

今回の構成では共通のベースイメージを使っていたため、先にそのPHPを更新して再ビルドし、アプリ側が参照するダイジェストも差し替えました。composer.jsonのPHP指定を変えるだけでは、PHP本体は更新されません。

既存のDockerfileがあるディレクトリで再ビルドし、完成したイメージのPHPバージョンと拡張機能を確認します。myappはこの例で付けるイメージ名です。

docker build --pull -t myapp:php-8.5.12 .
docker run --rm --entrypoint php myapp:php-8.5.12 -v
docker run --rm --entrypoint php myapp:php-8.5.12 -m

ここまではローカルでの構築と確認です。既存コンテナを再起動するだけでは、新しいイメージへの切り替えにはなりません。

3. 動作を確かめて、本番へ反映する

今回は予防的にサービスを一時停止し、本番のデータや認証情報を持ち込まない環境で修正版を検証しました。失敗したテストは更新前のPHPでも比較し、既存テストの不整合を修正。更新後に単体・機能テスト328件が通ることを確認しました。

ステージングでログインや管理画面の表示・操作などを運営側と確認してから本番へ反映しました。本番のWebアプリとバッチの両方で、PHPのバージョンも確認しました。

それまでに用意していたこと

7月から基盤の更新を進め、8月にはPHP 8.0から8.5への移行に加え、フレームワークや画面側のライブラリも更新・検証していました。そのため、緊急対応ではPHPの修正更新と検証に作業を絞りました。

ログイン、管理画面、権限に応じたデータの表示、バッチ処理など、更新後も守るべき動作を確認項目やテストにまとめていました。共通のベースイメージを用意してバージョンを固定し、更新前後の変更範囲を追えるようにしました。

保守は、次の改善への投資

修正版が公開されても、それを適用して動作を確かめられる準備がなければ、すぐには更新できません。緊急時に基盤の移行やテストの整備から始めるとなると、対応の負担は大きくなります。その負担が、サービスを続けるかどうかの判断につながることもあります。

AIを使って実装を進めても、動作を確かめ、本番へ反映できる状態が整っていなければ、利用者へ届けるところで止まってしまいます。だから、日頃から基盤を更新し、変更後の動作を確かめる手順も整えておきます。

AI時代の保守は、サービスを続け、次の改善へ進むための投資だと思っています。今回も、事前に整えた基盤とテストを使い、影響を確認しながら更新と本番反映を進めました。

PHPのアップデートや、既存システムの保守・改善でお困りの方は、ウルフアプリケーションへご相談ください。

10月24日追記:PHP公式は10月23日、特定のセッション処理の組み合わせに関する追加案内を公開しています。次の通常リリースまではsession.upload_progress.enabled=0を推奨しています。設定変更後はPHPの各ワーカーを再起動し、公式の追加案内で適用条件を確認してください。

本文のコマンドは今回の構成を一般化した例です。更新先は、作業時点の公式・提供元の案内で確認してください。

参考:PHP 8.5.12 / 公式PHPイメージ / Dockerのビルド / ComposerのPHP指定